母平均の検定(Z検定)
母平均の検定統計量(母分散既知)
母集団を正規母集団と仮定します。
正規母集団 \(N(\mu,\sigma^2)\) から抽出した \(n\) 個の無作為標本を
\[
X_1,~~~X_2,~~~\cdots,~~~X_{n}
\]
とすると、この標本平均は
\[
\overline{X}=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^nX_i
\]
となります。このとき
\[
\overline{X}\sim N\left(\mu,~\frac{\sigma^2}{n}\right)
\]
となるので \(\overline{X}\) を標準化すると
\[
Z=\frac{\overline{X}-\mu}{\sqrt{\frac{\sigma^2}{n}}}\sim N(0,1)
\]
これが検定統計量となります。
標準正規分布に従う検定統計量を用いた検定を \(Z\) 検定といいます。
- 帰無仮説・対立仮説を立てる
- 検定統計量を計算する
- 有意水準を決める
- 棄却域を求める
- 検定統計量の実現値が棄却域に入るかを見る
- 帰無仮説・対立仮説を立てる
- 検定統計量を計算する
- 有意水準を決める
- p値を計算する
- p値が有意水準未満かを見る
例題(棄却域法)
あるカフェでは、\(1\) 杯のコーヒーは平均 \(200~\mathrm{mL}\) 注がれるように設定されています。
しかし最近、「量が少ない気がする」とお客様から苦情が出てきました。
そこで、ランダムに \(25\) 杯を計測したところ、得られた標本の標本平均の実現値は \(197.8~\mathrm{mL}\) となりました。
\(1\) 杯のコーヒーの量の平均は \(200~\mathrm{mL}\) と異なると言えるか、有意水準 \(5\%\) で判断してください。
母標準偏差は既知で \(5~\mathrm{mL}\) とします。
1. 帰無仮説・対立仮説を立てる
母平均を \(\mu\) として、次のように仮説を立てます。
帰無仮説 \(H_0:\mu=200\)
対立仮説 \(H_1:\mu\neq200\)
よって、両側検定を行います。
2. 検定統計量を計算する
検定統計量を \[ Z=\frac{\overline{X}-\mu}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}\sim N(0,1) \] とすると、\(Z\) の実現値 \(z\) は \[ z=\frac{197.8-200}{\frac{5}{\sqrt{25}}}=-2.2 \] となります。
3. 有意水準を決める
本問では有意水準 \(\alpha\) は \(5\%\) と与えられているので \[ \alpha=0.05 \] です。
4. 棄却域を求める
両側 \(5\%\) 点を求めます。
両側 \(5\%\) 点とは
\[
P(Z\le -z_{0.025})+P(Z\ge z_{0.025})=0.05
\]
となるような \(z_{0.025}\) です。
\[
P(Z\le -z_{0.025})=P(Z\ge z_{0.025})
\]
より
\[
P(Z\ge z_{0.025})=0.025
\]
を考えればよく、標準正規分布表より
\[
z_{0.025}=1.96
\]
とわかります。
したがって、棄却域は
\[
z\le-1.96,~~~1.96\le z
\]
となります。
検定統計量の実現値が棄却域に入るかを見る
検定統計量の実現値は
\[
z=-2.2
\]
であり、これは棄却域
\[
z\le-1.96,~~~1.96\le z
\]
に入ります。
よって、帰無仮説 \(H_0\) を棄却し、対立仮説 \(H_1\) を採択します。
\(1\) 杯のコーヒーの量の平均は \(200~\mathrm{mL}\) と異なると言えます。
例題(p値法)
今度は先ほどの例題をp値法を使って行います。
あるカフェでは、\(1\) 杯のコーヒーは平均 \(200~\mathrm{mL}\) 注がれるように設定されています。
しかし最近、「量が少ない気がする」とお客様から苦情が出てきました。
そこで、ランダムに \(25\) 杯を計測したところ、得られた標本の標本平均の実現値は \(197.8~\mathrm{mL}\) となりました。
\(1\) 杯のコーヒーの量の平均は \(200~\mathrm{mL}\) と異なると言えるか、有意水準 \(5\%\) で判断してください。
母標準偏差は既知で \(5~\mathrm{mL}\) とします。
1. 帰無仮説・対立仮説を立てる
母平均を \(\mu\) として、次のように仮説を立てます。
帰無仮説 \(H_0:\mu=200\)
対立仮説 \(H_1:\mu\neq200\)
よって、両側検定を行います。
2. 検定統計量を計算する
検定統計量を \[ Z=\frac{\overline{X}-\mu}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}\sim N(0,1) \] とすると、\(Z\) の実現値 \(z\) は \[ z=\frac{197.8-200}{\frac{5}{\sqrt{25}}}=-2.2 \] となります。
3. 有意水準を定める
本問では有意水準 \(\alpha\) は \(5\%\) と与えられているので \[ \alpha=0.05 \] です。ここまでは棄却域法と同様です。
4. p値を計算する
\[ \begin{align} p&=P(|Z|\ge |z|)\\ &=P(|Z|\ge 2.2)\\ &=P(Z\le-2.2)+P(Z\ge 2.2)\\ &=2P(Z\ge 2.2)\\ &=2\cdot 0.0139~~~(\because\text{標準正規分布表より})\\ &=0.0278 \end{align} \]
5. p値が有意水準未満かを見る
有意水準 \(\alpha\) と p値 \(p\) は
\[
\alpha=0.05,~~~~~p=0.0278
\]
なので
\[
p\lt\alpha
\]
となり、p値が有意水準を満たないことがわかります。
よって、帰無仮説 \(H_0\) を棄却し、対立仮説 \(H_1\) を採択します。
\(1\) 杯のコーヒーの量の平均は \(200~\mathrm{mL}\) と異なると言えます。
このように、棄却域法のときと同じ結論が得られます。