二項分布

ベルヌーイ試行

次の3つの条件を満たす試行をベルヌーイ試行といいます。

反復試行の確率

例題

表が出る確率が \(p\) のコインを3回投げる。次の確率を求めよ。

  1. 1回目に表、2回目に表、3回目に裏が出る確率
  2. 表が2回、裏が1回出る確率
  1. 求める確率は \[ p\times p\times(1-p)=p^2(1-p) \] である。
  2. これは \(p^2(1-p)\) ではない。 表が2回、裏が1回出る場合は

    ・1回目に表、2回目に表、3回目に裏が出る

    ・1回目に表、2回目に裏、3回目に表が出る

    ・1回目に裏、2回目に表、3回目に表が出る

    の3通りが存在する。求める確率は \[ p^2(1-p)\times3 \] となる。

次に、試行回数を \(n\) 回とし、表が \(k\) 回出る確率を考える。

表が \(k\) 回出る場合は \(_{n}\mathrm{C}_k\) 通り存在する。

\[ _{n}\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k} \]

二項分布の定義と性質

成功確率が \(p\) のベルヌーイ試行を \(n\) 回行うとき、その成功回数 \(X\) が従う確率分布を二項分布といいます。

定義(二項分布)

\(p\in(0,1)\) 、\(n\in\mathbb{N}\) とする。 確率変数 \(X\) の確率質量関数 \(f_X(x)\) が

\[ f_X(x)={_{n}\mathrm{C}_x}p^x(1-p)^{n-x}~~(x=0,1,\cdots,n)\\ \]

であるとき、\(X\) は二項分布 \(B(n,p)\) に従うといい

\[ X\sim B(n,p) \]

と表す。

定理(二項分布の積率母関数)

\(X\sim B(n,p)\) の積率母関数は次式で表される。

\[ M_X(t)=(e^tp+1-p)^n \]
証明
\[ \begin{align} M_X(t)&=E[e^{tX}]\\ &=\sum_{x=0}^ne^{tx}{_{n}\mathrm{C}_x}p^x(1-p)^{n-x}\\ &=\sum_{x=0}^n{_{n}\mathrm{C}_x}(e^tp)^x(1-p)^{n-x}\\ &=(e^tp+1-p)^n \quad (\because\text{二項定理より}) \end{align} \]
定理(二項分布の期待値と分散)

\(X\sim B(n,p)\) のとき、次が成り立つ。

\[ E[X]=np,\quad V[X]=np(1-p) \]
証明
\[ E[X]=\sum_{k=0}^nk\binom{n}{k}p^k(1-p)^{n-k} \]

演習問題

問題

A,B,C,Dの文字が書かれた4枚のカードの中から無作為に1枚のカードを取り出し、元に戻す操作を128回繰り返したとき、Aのカードを引く回数を \(X\) とする。 このときの \(X\) の期待値と分散を求めよ。

解答

1回の試行の成功確率(A,B,C,Dの文字が書かれた4枚のカードの中からAのカードを引く確率)は \(\displaystyle\frac{1}{4}\) である。

操作を128回繰り返して、\(X=k\) となる確率は

\[ P(X=k)=\binom{128}{k}\left(\frac{1}{4}\right)^k\left(\frac{3}{4}\right)^{128-k}~~~(k=0,1,\cdots,128) \]

したがって、\(\displaystyle X\sim Bin\left(128,\frac{1}{4}\right)\) であるから

\[ E[X]=128\cdot\frac{1}{4}=32 \] \[ V[X]=128\cdot\frac{1}{4}\cdot\frac{3}{4}=24 \]