整式×階乗の和
今回の内容の説明
整式 \(P(k)\) と階乗 \(k!\) の積の和
\[
\sum_{k=1}^nP(k)\cdot k!
\]
を考える。これは直接、総和の公式を用いることができないため、適切な関数 \(f(k)\) を見つけて
\[
\sum_{k=1}^nP(k)\cdot k!=\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}
\]
と変形することを試みる。
具体的な計算例
\[
\sum_{k=1}^n(3k^2+4k+3)k!
\]
を考える。
\[
(3k^2+4k+3)k!=f(k+1)-f(k)
\]
となるような \(f(k)\) を見つければよい。前回の多項式×指数の和
\[
\sum_{k=1}^nP(k)r^k
\]
では、\(P(k)\) の次数から \(f(k)\) を仮定し、恒等式を用いて計算した。今回も同様に考えて
\[
f(k)=(ak^2+bk+c)k!
\]
と置いてみる。このとき
\[
\begin{align}
f(k+1)&=\{a(k+1)^2+b(k+1)+c\}(k+1)!\\
&=\{ak^2+(2a+b)k+a+b+c\}(k+1)\cdot k!\\
&=\{ak^3+(3a+b)k^2+(3a+2b+c)k+a+b+c\}k!
\end{align}
\]
となる。このまま進めてもいいのだが、\(k^3\) の項は不要である。
\[
f(k)=(ak^2+bk+c)k!
\]
とおくと、\((k+1)!=(k+1)\cdot k!\) であることから \(f(k+1)\) に \(k^3\) が出現している。したがって
\[
f(k)=(ak+b)k!
\]
とおいた方が、より楽に計算できることがわかる。このとき
\[
\begin{align}
f(k+1)&=\{a(k+1)+b\}(k+1)!\\
&=(ak+a+b)(k+1)\cdot k!\\
&=\{ak^2+(2a+b)k+a+b\}k!
\end{align}
\]
となり
\[
\begin{align}
&f(k+1)-f(k)\\
&=\{ak^2+(2a+b)k+a+b\}k!-(ak+b)k!\\
&=\{ak^2+(a+b)k+a\}k!
\end{align}
\]
である。
係数比較を行う前に、注目してほしい箇所がある。この方法には注意が必要であることに気づくだろうか。
\[
\{ak^2+(a+b)k+a\}k!
\]
より、\(k^2\) の係数 \(a\) を定めると、定数項も自動的に決まってしまう。すなわち
\[
\sum_{k=1}^n(3k^2+4k+1)k!
\]
のような問題であれば、満たす \(a\) が存在しない。本問は
\[
\sum_{k=1}^n(3k^2+4k+3)k!
\]
で、2次の係数と定数項が等しいから、この手法が使えることになる。
多項式×階乗の和は、多項式×指数の和のときのように、必ずしも恒等式を用いて \(f(k)\) を作り出すことができない。
\(\{ak^2+(a+b)k+a\}k!\) と \((3k^2+4k+3)k!\) の係数を比較して
\[
a=3,~~~~~a+b=4,~~~~~a=3
\]
これを解くと
\[
a=3,~~~~~b=1
\]
となり
\[
f(k)=(3k+1)k!
\]
とすればよいことがわかる。
したがって
\[
\begin{align}
&\sum_{k=1}^n(3k^2+4k+3)k!\\
&=\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}\\
&=f(n+1)-f(1)\\
&=\{3(n+1)+1\}(n+1)!-(3\cdot 1+1)1!\\
&=(3n+4)(n+1)!-4
\end{align}
\]
演習問題
問題