総和の定義と性質
総和の定義と性質
定義(総和記号)
数列 \(\{a_n\}\) に対して
\[
\sum_{k=1}^na_k=a_1+a_2+\cdots+a_n
\]
として記号 \(\sum\) を定義する。
\(\displaystyle\sum_{k=m}^na_k\) は \(\{a_n\}\) の第 \(m\) 項から第 \(n\) 項までの和を表す。
記号Σはレオンハルト・オイラーが最初に使用したとされている。総和(summation)の頭文字Sに対応するギリシャ文字である。
定理(総和の線形性)
\(p,q\) を \(k\) に無関係な定数とすると
\[
\displaystyle\sum_{k=1}^n(pa_k+qb_k)=p\sum_{k=1}^na_k+q\sum_{k=1}^nb_k
\]
総和の計算方法
総和は項がずれた差の形
\[
f(k+1)-f(k)
\]
を作ることで次のように計算できる。
定理(差分の総和)
\[
\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}=f(n+1)-f(1)
\]
証明
\(
\begin{align}
&\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}\\
&=\{f(2)-f(1)\}+\{f(3)-f(2)\}+\{f(4)+f(3)\}\\
&~~~~~+\cdots+\{f(n)-f(n-1)\}+\{f(n+1)-f(n)\}\\
&=f(n+1)-f(1)
\end{align}
\)
2項ずれた差の形 \(f(k+2)-f(k)\) でも同様に
\[
\begin{align}
&\sum_{k=1}^n\{f(k+2)-f(k)\}\\
&=f(n+1)+f(n+2)-f(1)-f(2)
\end{align}
\]
のように計算できる。
具体例から理解する
例題
\(\displaystyle\sum_{k=1}^n k\) を計算せよ。
適切な関数 \(f(k)\) を見つけて
\[
\sum_{k=1}^n k=\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}
\]
と変形することができれば、この総和は計算できる。
どのように \(f(k)\) を見つけるかだが、とりあえず
\[
f(k)=ak^2+bk
\]
とおいてみる。
この発想の理由
・なぜ二次式なのか
一次式 \(f(k)=ak+b\) では、\(f(k+1)-f(k)=a\) となり、\(k\) の項が消えてしまう。 ・定数項を考えない理由
\(f(k)=ak^2+bk+c\) としても、\(f(k+1)\) と \(f(k)\) の差をとると、定数項 \(c\) は消えるため、不要である。
一次式 \(f(k)=ak+b\) では、\(f(k+1)-f(k)=a\) となり、\(k\) の項が消えてしまう。 ・定数項を考えない理由
\(f(k)=ak^2+bk+c\) としても、\(f(k+1)\) と \(f(k)\) の差をとると、定数項 \(c\) は消えるため、不要である。
このとき
\[
\begin{align}
f(k+1)&=a(k+1)^2+b(k+1)\\
&=ak^2+(2a+b)k+a+b
\end{align}
\]
であり
\[
f(k+1)-f(k)=2ak+a+b
\]
となる。すなわち、すべての \(k\) に対して
\[
2ak+a+b=k
\]
が成り立てばよいから、両辺の係数を比較して
\[
2a=1,~~~a+b=0
\]
ゆえに
\[
a=\frac{1}{2},~~~b=-\frac{1}{2}
\]
したがって
\[
f(k)=\frac{1}{2}k^2-\frac{1}{2}k
\]
とすればよいことがわかる。
<解答>
\[ f(k)=\frac{1}{2}k^2-\frac{1}{2}k \] とおくと \[ f(k+1)-f(k)=k \] であるから \[ \begin{align} \sum_{k=1}^nk&=\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}\\ &=f(n+1)-f(1)\\ &=\frac{1}{2}(n+1)^2-\frac{1}{2}(n+1)\\ &=\frac{1}{2}n(n+1) \end{align} \]
\[ f(k)=\frac{1}{2}k^2-\frac{1}{2}k \] とおくと \[ f(k+1)-f(k)=k \] であるから \[ \begin{align} \sum_{k=1}^nk&=\sum_{k=1}^n\{f(k+1)-f(k)\}\\ &=f(n+1)-f(1)\\ &=\frac{1}{2}(n+1)^2-\frac{1}{2}(n+1)\\ &=\frac{1}{2}n(n+1) \end{align} \]
総和の公式
定理(総和の公式)
- \(\displaystyle\sum_{k=1}^nc=cn\)( \(c\) は \(k\) に無関係な定数)
- \(\displaystyle\sum_{k=1}^nk=\frac{1}{2}n(n+1)\)
- \(\displaystyle\sum_{k=1}^nk^2=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\)
- \(\displaystyle\sum_{k=1}^nk^3=\left\{\frac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\)
証明
演習問題
問題
- \(f(k+1)-f(k)=2k^2-3k+1\) が成り立つような、\(f(k)\) を1つ求めよ。
- \(\displaystyle\sum_{k=1}^n(2k^2-3k+1)\) を計算せよ。(総和の公式は用いない)
- (2)の総和を、総和の公式を用いて計算せよ。